トマトコラム

トマトは野菜?果物?歴史的裁判を解説

2024年10月30日

トマト小話

果物裁判野菜

トマトは野菜?果物?歴史的裁判を解説
トマトは野菜?果物?と疑問に思ったことはありませんか?スーパーでは野菜コーナーに分類されているトマトですが、植物学的には「果物」に分類されます。「トマトは野菜なのか果物なのか」という疑問に対し過去には裁判まで行われました。一体なぜこのような混乱が生じるのでしょうか?その意外な分類基準を紐解いていきましょう。

トマトは野菜?果物?その意外な分類基準とは

植物学的には、トマトは「果物」に分類されます。
果物(果実)とは、植物の受精後の子房が成熟してできる、種子を含む部分を指します。トマトも、花が受粉した後、子房が膨らんで実となるため、植物学的な定義に合致するのです。つまり、私たちが普段食べているトマトは、立派な果物なのです。

しかし、一般的に果物は甘く柔らかく、デザートなどに利用されることが多い一方、野菜は硬く、様々な料理に使われます。
トマトは甘みも持っていますが、サラダや炒め物などに使われることが多いため、日常生活では料理における使い方や食文化的な位置から、野菜として扱われています。

ニックス対ヘデン裁判

トマトは野菜?果物?歴史的裁判を解説

「ニックス対ヘデン裁判」は、アメリカにおいて1883年に起こされた裁判で、トマトが「果物」か「野菜」かを巡って争われた歴史的な裁判です。
裁判の発端は、1883年にアメリカで施行された「関税法」にあります。
この法律では、輸入される野菜には関税が課される一方、果物には関税がかかりませんでした。当時、トマトは輸入量が多かったため、関税の対象となるかどうかは大きな問題でした。

ニューヨークの輸入業者ジョン・ニックス(John Nix)は、トマトは「果物」であると主張し、関税がかからない扱いを求めました。彼の主張は、トマトが植物学的に「果実」として分類されることに基づいており、トマトは花から形成される果実であるため、果物であると考えるのが正しいというものでした。
しかし、ニューヨーク税関の担当者であったエドワード・ヘデンは、トマトを「野菜」として分類し、関税の支払いを求めました。この対立が裁判に発展し、最終的には最高裁判所にまで持ち込まれたのです。

裁判での争点

裁判の争点は、「トマトが果物なのか野菜なのか」というシンプルな問いに集約されました。
ニックス側は、植物学の観点からトマトが果物であることを証明しようとしました。一方、ヘデン側は、トマトが実際には「野菜」として日常的に認識され、利用されていることを訴えました。

ニックスの弁護団は、トマトが果物である証拠として、植物学の教科書や辞書を引用し、「果実とは植物の花から生じるものである」と主張しました。また、裁判中、辞書の定義も使用され、果物と野菜の違いが議論されました。しかし、裁判官たちは、辞書の定義だけでは日常的な認識に合わないと判断しました。

判決

裁判所は1889年に判決を下し、トマトは「野菜」であると認定しました。この判決では、植物学的な定義ではなく、トマトが日常生活でどのように扱われているかが基準とされました。裁判所は、トマトが一般に食卓での扱いや料理法として、野菜のように使用されていることを理由に「野菜」と判断しました。

判決文には、「トマトはスープ、主菜、サラダの材料として使われるが、果物のようにデザートには使用されない」と明記されており、植物学的には果実であっても、アメリカの家庭や食卓においては「野菜」として認識されていることを重視したのです。

この歴史的な判決は、科学的な分類と、社会的な認識のずれを明確に示した象徴的な事例と言えるでしょう。

裁判が示唆する、分類の複雑さ

この歴史的裁判は、トマトの分類が単純なものではないことを示しています。植物学、食文化、商業的な扱い方など、様々な要素が複雑に絡み合い、分類を難しくしているのです。
トマトの分類をめぐる議論は、単なる言葉遊びではなく、科学、文化、そして経済が複雑に交錯する現実を反映していると言えるでしょう。
この判決は、トマトの分類に関する議論に一つの結論を与えた一方で、分類基準の多様性と複雑さを改めて認識させてくれる、興味深い事例として現在も語り継がれています。

植物学的な分類と、実際の生活における扱いの違いは、現代においても様々な植物に当てはまる普遍的な問題であり続けるのです。
例えば、キュウリやカボチャなども植物学的には果物に分類されます。これらは、私たちが普段野菜として認識しているものですが、種を持ち、花から実る果実という点ではトマトと同じなのです。
このように、植物学的な分類と、私たちの感覚的な分類は必ずしも一致しないことがわかります。

まとめ

結論として、野菜と果物の分類には絶対的な基準はなく、それぞれ異なる解釈が成り立つと言えるでしょう。植物学的な定義、料理での使い分け、甘味と酸味の度合い、そして食文化など、様々な視点から分類を理解することで、より深く野菜と果物の世界を楽しむことができるでしょう。 トマトが果物であること、そして野菜と果物の分類の曖昧さを理解することで、食卓の多様性と奥深さを改めて感じることができるはずです。

和田農園の「やりすぎトマト」は濃厚な味わいと甘さが特徴です。当時の裁判官が食べていたらトマトは野菜ではなく果物だと判決が出ていたのではないかと妄想してしまいます。
ぜひ一度、「やりすぎトマト」の甘さを体感してみてください。